アルバイトへの接し方に迷う店長へ。働く理由に合わせた仕事の任せ方
アルバイトに同じように声をかけ、同じように仕事を教えていても、受け取り方は人によって違います。
私がコンビニフランチャイズ店舗で80人以上の採用・育成に関わっていた頃、発注や新人教育、売り場づくりなどを覚え、資格試験に合格すると時給が上がる制度がありました。
収入を増やしたいスタッフにとっては、こうしたスキルアップが分かりやすい目標になります。
一方、学校や家庭との両立を重視し、現在の仕事を安定して続けたい人にとっては、同じ提案が仕事や責任の増加に感じられることもありました。
また、「週5日働きたい」「月にこれくらい稼ぎたい」という本人の希望を受けてシフトを調整しても、実際に働き始めると、希望日数を大きく減らしたり、短期間で辞めたりするケースもありました。
退職理由を詳しく聞けなかった場合も多く、原因を断定することはできません。
ただ、本人が希望する働き方と、実際に無理なく続けられる働き方は、必ずしも一致しないと感じました。
この経験から、本人の希望を尊重することと、その希望をそのまま仕事やシフトへ反映することは別だと考えるようになりました。
確認したいのは、次の3点です。
- 本人が何を目的に働いているのか
- 希望する働き方を無理なく続けられそうか
- 職場側もその希望を継続して受け入れられるか
この記事では、アルバイトの働く理由を確認する方法と、本人に合わせて変えてよい仕事の任せ方、全員に共通させる職場の基準について、私の経験をもとに整理します。
同じ仕事の任せ方が、すべてのアルバイトに合うわけではない

店長や教育担当者から見ると、新しい仕事を覚えてもらうことは、本人にとっても良い機会に見えます。
私が働いていたコンビニフランチャイズでは、発注、新人教育、売り場づくりなどを経験し、資格試験に合格すると時給が上がる仕組みがありました。
収入を増やしたいスタッフにとっては、新しい仕事を覚えることが資格取得や時給アップにつながります。
一方、学校や家庭との両立を優先している人や、現在の役割を安定して続けたい人にとっては、同じ提案が仕事と責任の増加に感じられることがあります。
店長側は成長の機会を渡しているつもりでも、本人が望んでいなければ、意欲にはつながりにくくなります。
教わる本人だけでなく、教育を担当するスタッフにも時間がかかるため、新しい仕事を任せる前には、次の内容を確認する必要があります。
- 今より収入を増やしたいか
- 資格や時給アップに興味があるか
- 覚えてみたい仕事があるか
- 現在の勤務や仕事量に余裕があるか
新しい仕事を望まないことだけで、「やる気がない」と判断するべきではありません。
やる気がないと判断する前に確認したいことは、「やる気がないアルバイトへの接し方」で詳しく整理しています。
現在任されている仕事を、決められた時間の中で責任を持って行うことを重視している人もいます。
反対に、収入や成長を求めている人へ、負担をかけないようにと同じ仕事だけを任せ続ければ、本人が物足りなさを感じることもあります。
相手に合わせるとは、仕事の基準を下げることではありません。
本人が何を望んでいるかと、現在どこまで任せられるかを確認し、仕事を教える順番や次の目標を調整することです。
アルバイトの働く目的を確認する3つの観点

アルバイトが働く理由は、一つとは限りません。
生活費を得ながら経験も積みたい人もいれば、学校を優先しつつ、趣味に使うお金を得たい人もいます。採用時に話していた目的が、働き続ける中で変わることもあります。
そのため、「生活のために働くタイプ」「成長したいタイプ」と固定せず、現在何を重視しているかを確認することが大切です。
私は、主に次の3つの観点から本人の希望を確認していました。
収入や生活のために、どの程度働きたいのか
同じ「稼ぎたい」という言葉でも、その意味は人によって異なります。
生活費や学費として必要な金額が決まっている人もいれば、できれば多く稼ぎたいと考えている人もいます。
希望金額だけを聞いて勤務日数を決めるのではなく、次の内容も確認します。
- 月に必要な金額が決まっているか
- 週に何日、何時間働く想定なのか
- 学校や家庭と両立できそうか
- 勤務日数と時給アップのどちらを望んでいるか
金銭事情を詳しく聞き出す必要はありません。
ただ、本人が希望する収入に近づけるためには、どのような働き方を想定しているかを確認する必要があります。
収入を増やしたい人には、勤務日数を増やすほかに、本人が望む場合は資格取得やスキルアップによって時給を上げる選択肢も提案できます。
学校や家庭、私生活とどう両立したいのか
アルバイト以外に優先したい予定がある人もいます。
学生であれば授業や試験、部活動があります。家庭や育児、ほかの活動と両立しながら働いている人もいます。
勤務日数が少ないことだけを見て、仕事への意欲が低いと判断するべきではありません。
出勤した時間の中で、任された仕事を責任を持って行っている人もいます。
確認するのは、私生活の詳しい事情ではなく、シフトを組むために必要な範囲です。
例えば、次のように聞けます。
- 今の勤務日数で無理なく両立できているか
- シフトを減らしたい時期があるか
- 勤務できる曜日や時間帯が変わる予定はあるか
あらかじめ忙しくなる時期を共有できれば、本人も店舗側もシフトを調整しやすくなります。
成長や経験、時給アップをどの程度求めているのか
新しい仕事を覚えたい人や、資格取得を目指したい人もいます。
一方、現在の仕事を安定して続けることを望み、それ以上の役割を求めていない人もいます。
店長が「本人のためになる」と考えていても、本人が同じように感じているとは限りません。
新しい仕事を提案する前には、次の内容を確認します。
- 覚えてみたい仕事があるか
- 資格や時給アップに興味があるか
- 現在の仕事量に余裕があるか
- どのような役割なら挑戦したいか
本人が希望した場合でも、発注や新人教育など周囲への影響が大きい仕事は、基本業務の習得状況を確認しながら少しずつ任せます。
新人へ仕事を教える順番や、質問しやすい関係の作り方は、「新人アルバイトが育つ職場の特徴」で詳しく整理しています。
反対に、スキルアップを望んでいない場合でも、現在任されている仕事の基準を下げるわけではありません。
働く目的を確認する3つの観点は、人を分類するためのものではありません。
本人が望んでいる働き方と、店長が提案しようとしている仕事やシフトが合っているかを確認するためのものです。
希望する働き方が続けられるかは、働き始めてから確認する
採用面接で、「週5日働きたい」「月にこれくらい稼ぎたい」と希望する人もいます。
人手が足りない店舗では、多く勤務できる人を頼もしく感じます。本人の希望と店舗側の事情が一致しているようにも見えます。
私も以前は、本人が多く働きたいと話しているなら、希望に近いシフトを用意することが双方にとって良いと考えていました。
しかし、希望する勤務量と、実際に無理なく続けられる勤務量が一致しないことがあります。
一人の希望勤務を受け入れると、採用人数にも影響する
一人のスタッフが週5日働けるようにシフトを組む場合、その人が入る時間帯では、別の人を採用しないことがあります。
同じ曜日や時間帯を希望する応募者がいても、
「すでに多く勤務できる人を採用している」
と判断し、採用を見送ることもありました。
そのため、一人の希望勤務を受け入れることは、単にその人のシフトを増やすだけではありません。
店舗全体の採用人数や、ほかのスタッフの勤務枠にも影響します。
ところが、週5日勤務を希望していた人が、1か月に満たないうちに辞めたり、研修が終わる頃に希望日数を週2日ほどまで減らしたりすることがありました。
中には、連絡がないまま来なくなった人もいます。
詳しい理由を聞けなかった場合も多いため、なぜ続かなかったのかを断定することはできません。
ただ、その人が多く勤務する前提で採用人数を調整していたため、急に勤務が減るとシフトに大きな穴が空きます。
代わりに働ける人が見つからず、店長や既存スタッフが勤務を増やさなければならないこともありました。
この経験から、本人の希望を尊重しながらも、最初から一人の勤務へ依存しすぎないことが必要だと考えるようになりました。
生活に必要な勤務量か、希望する勤務量かを確認する
「多く稼ぎたい」という言葉の意味は、人によって異なります。
生活するために毎月必要な金額が決まっている人もいれば、可能であれば多く稼ぎたいと考えている人もいます。
生活に必要な金額があり、研修中から一定の収入を確保しなければならない人には、事情を確認したうえで、できる限り希望に近い勤務時間を用意することもありました。
一方、すぐに一定額を必要としているわけではない人には、研修中は少ない日数から始め、仕事に慣れた後で勤務を増やす方法もあります。
確認したいのは、主に次の内容です。
- 月に必要な金額が決まっているか
- これまで同程度の日数を働いた経験があるか
- 学校や家庭などと両立できそうか
- 研修中から多く働く必要があるか
- 段階的に勤務を増やすことが可能か
ただし、採用時に詳しく確認しても、実際に続けられるかを完全に判断することはできません。
仕事内容を覚える負担や通勤、生活リズムへの影響など、働いてから初めて分かることもあるためです。
働き始めた後に、希望とのずれを確認する
採用時に一度希望を聞いて終わりにせず、働き始めた後にも状態を確認します。
「週5日で大丈夫ですか」と聞き、「大丈夫です」と返ってきただけでは、継続できるか判断しきれません。
次のような変化がないかを見たうえで、本人へ確認します。
- 遅刻や欠勤が増えていないか
- 希望する勤務日数が変わっていないか
- 新しい仕事が増えて余裕を失っていないか
- 学校や家庭との両立が難しくなっていないか
- 以前より質問や会話が減っていないか
変化があっても、店長側だけで原因を決めつけるべきではありません。
例えば、次のように本人へ聞きます。
「今の勤務日数で、無理なく続けられそうですか」
「働き始める前に考えていた勤務と、実際に働いた感覚に違いはありますか」
「曜日や時間を変えた方が続けやすいですか」
勤務日数を減らしたいと言われた場合も、すぐに「最初の話と違う」と責めるのではなく、変更の内容を確認します。
- 一時的に減らしたいのか
- 今後も同じ日数にしたいのか
- 曜日や時間を変えれば続けられるのか
- 店舗側が調整するまでどの程度待てるのか
ただし、希望が変わったからといって、店舗側がすぐにすべて対応できるとは限りません。
すでにほかのスタッフの勤務が決まっていれば、勤務を増やせないことがあります。急に日数を減らす場合も、代わりの人を探す時間が必要です。
その場合は、希望を受け入れられる時期や範囲を具体的に伝えます。
本人の働く目的や希望は、採用時のまま固定されるものではありません。
最初は収入を重視していた人が、学校や家庭との両立を優先するようになる場合もあります。反対に、現在の仕事だけを希望していた人が、仕事に慣れて資格取得へ興味を持つこともあります。
本人の希望を尊重するとは、採用時に聞いた内容をそのまま守り続けることではありません。
実際に働きながら、本人が続けられる勤務量と、店舗側が無理なく受け入れられる範囲を確認し、必要に応じて調整することです。
本人の希望に応えられない時は、理由と選択肢を伝える

アルバイトの働く目的や事情を理解していても、本人の希望をすべて受け入れられるとは限りません。
学校の試験や家庭の予定を優先したい人がいる一方、店舗側にも、営業に必要な人数があります。
急な欠勤や退職によってシフトが埋まらない時には、休みを希望しているスタッフへ勤務を相談することもありました。
私が働いていた店舗は学生スタッフが多かったため、普段の会話の中で、本人が話してくれた範囲の試験日程や苦手科目を把握するようにしていました。
家庭や学校の事情を詳しく聞き出すのではなく、シフト調整に必要な範囲で確認します。
- 試験が始まる時期
- 勤務を減らしたい期間
- 特に勉強時間を確保したい科目
- 短時間であれば勤務できるか
人手が足りず出勤をお願いする場合も、最初から勤務する前提では話しません。
まず勉強の進み具合を聞き、余裕がありそうであれば、短い時間だけでも協力できるかを確認していました。
例えば、次のように相談します。
「テスト勉強は進んでいますか」
「難しくなければ、短い時間だけ手伝ってもらえますか」
「厳しければ、無理に入らなくても大丈夫です」
本人の苦手な科目の試験が近いと分かっている場合は、最初から勤務を頼まないこともありました。
一方、勉強が進んでいて本人にも余裕があれば、数時間だけ協力してもらえることもあります。
ここで注意したいのは、普段から築いてきた関係を、勤務を断りにくくするために使わないことです。
「いつも良くしているから」「ほかの人も入っているから」と伝えれば、本人は難しい状況でも断りにくく感じる可能性があります。
勤務をお願いする時は、店舗側の事情も具体的に伝えます。
- どの時間帯の人手が足りないのか
- 何時間ほど協力してほしいのか
- 今回だけの相談なのか
- ほかのスタッフにも確認しているのか
理由と必要な時間が分かれば、本人も協力できるか判断しやすくなります。
難しいと言われた場合は、その回答を受け入れます。
確定していない追加勤務をお願いする場合は、本人が断れる前提で相談することが必要です。すでに確定したシフトを変更する場合も、一方的に決めるのではなく、本人と調整します。
また、同じスタッフばかりに勤務を頼まないことも大切です。
特定の人へ何度も依頼しなければシフトが成立しないのであれば、個人への頼み方ではなく、採用人数やシフトの組み方に問題がないかを見直す必要があります。
本人の事情を理解することは、店舗側から何も相談しないことではありません。
本人の状況を確認し、必要な理由と選択肢を伝えたうえで、難しい時には断れる形で相談することが大切です。
相手に合わせて変えてよいことと、全員に共通させること

アルバイトの働く理由に合わせて接し方を変えることは、人によって仕事の基準を変えることではありません。
個別に調整してよい部分と、全員に守ってもらう部分を分けて考える必要があります。
相手に合わせて変えてよいこと
本人の希望や習得状況に応じて、次のような部分は調整できます。
- 新しい仕事を提案する時期
- 仕事を教える順番
- シフトを増やすペース
- 次に目指す役割や目標
- 声のかけ方や評価の伝え方
例えば、時給を上げたいスタッフには、資格取得につながる発注や新人教育、売り場づくりを提案できます。
一方、学校や家庭との両立を重視し、現在の仕事を安定して続けたい人に、同じ目標を求める必要はありません。
同じ仕事を教える場合でも、基本業務を早く身につけた人には次の役割を少しずつ任せ、不安が強い人には経験者と一緒に取り組んでもらうなど、進め方を変えられます。
ここで変えるのは、仕事の基準ではなく、基準に到達するまでの順番や方法です。
仕事を任せた後は、できるようになったことや、自分から動けた行動を具体的に伝えることも大切です。声をかけるタイミングは、「アルバイトを褒めるタイミング」で詳しく整理しています。
全員に共通させること
本人が何を目的に働いていても、現在任されている仕事で守る基準は共通です。
例えば、次のような内容です。
- 遅刻や欠勤を決められた方法で連絡する
- 金銭や商品の問題を報告する
- 安全や衛生に関するルールを守る
- 必要な接客を行う
- 分からないことを、自分だけで判断して進めない
- ほかのスタッフへ一方的に負担を押しつけない
資格取得を目指していない人でも、現在担当している仕事は決められた基準で行う必要があります。
学校を優先している人であっても、出勤すると決めた日の勤怠連絡や、勤務中の報告まで不要になるわけではありません。
本人の事情を理解することと、必要な注意や確認をしないことは別です。
個別対応には説明できる理由を持つ
人によってシフトや仕事の任せ方を変えると、周囲から特別扱いに見えることがあります。
そのため、個別に調整する場合は、店長自身が判断理由を説明できる状態にしておきます。
例えば、
- 現在の習得状況を見て次の仕事を任せている
- 資格取得を希望しているため必要な経験を積んでもらっている
- 試験期間のため一時的に勤務日数を調整している
- 研修中のため勤務を段階的に増やしている
といった理由です。
ただし、本人の家庭事情や金銭事情まで、ほかのスタッフへ伝える必要はありません。
「本人の希望や習得状況を確認して調整している」と、職場運営に必要な範囲だけを説明します。
店長が気に入っている人だけに役割を与えたり、頼みやすい人へ急な勤務を集中させたりすることは、本人に合わせた対応とは異なります。
相手に合わせるとは、希望をすべて受け入れることでも、仕事の基準を下げることでもありません。
共通の基準を保ちながら、教える順番や次に目指す役割を一人ひとりに合わせて調整することです。
個人への接し方だけで解決できない問題もある

アルバイトの働く理由を確認し、本人に合わせて仕事やシフトを調整しても、同じ時期に退職が続く場合は、個人への接し方だけで解決できない可能性があります。
例えば、次のような状態です。
- 特定の人へ勤務や仕事が偏っている
- 急な勤務を頼む相手が固定されている
- 教える人によって説明が違う
- 新人を受け入れる時間や人員が不足している
- 店長がシフトの穴を埋め続けている
このような状態で退職が起きた時に、本人のやる気や希望だけを原因にすると、同じ問題が繰り返されます。
本人とのすれ違いは、働く理由や希望を確認して調整します。
一方、複数のスタッフに同じ問題が起きている場合は、コミュニケーション、教え方、シフトと負担など、職場全体を見直す必要があります。
退職が続く職場全体の見直し方は、「アルバイトがすぐ辞める職場で見直した3つのポイント」で詳しく整理しています。
まとめ

アルバイトへの接し方や仕事の任せ方は、全員同じにする必要はありません。
まず確認したいのは、次の3点です。
- 本人が何を目的に働いているのか
- 希望する働き方を無理なく続けられそうか
- 職場側もその希望を継続して受け入れられるか
収入を増やしたい人には、勤務日数だけでなく、資格取得や時給アップにつながる仕事を提案できる場合があります。
一方、学校や家庭との両立を重視する人に、同じ役割や成長を求める必要はありません。
ただし、本人に合わせて変えるのは、仕事を教える順番やシフトを増やすペース、次に目指す役割などです。
勤怠、安全、金銭、接客、報告といった、現在の仕事で守る基準は全員に共通させます。
本人の希望は、採用時から変わることもあります。
最初に聞いた内容だけで判断せず、勤務量や役割を変えた後にも、無理なく続けられているかを確認することが大切です。
