部下が「どうしたらいいですか」と聞いてくる時の返し方。すぐ答える質問と考えてもらう質問

部下や後輩から何度も「どうしたらいいですか」と聞かれると、正直疲れてしまうことがあります。

状況の説明や確認した内容がないまま答えだけを求められると、丸投げ質問のように感じ、「少しは自分で考えてほしい」と思うのも無理はありません。

ただし、すべての質問に「自分ではどう思う?」と返せばよいわけでもありません。

お客様がその場で待っている時や、金銭、安全、期限に関わる時は、本人に考えてもらうことより、問題を広げない対応を優先する必要があります。一方で、必要な情報がそろっているなら、すぐに答えを教えず、本人の考えを確認した方がよい場面もあります。

私はコンビニフランチャイズ店舗の運営を通じて、80人以上の採用や育成に関わってきました。現在は自分が上司へ質問や確認をする立場でもあります。

その両方を経験して感じるのは、質問の回数だけで「自分で考えていない」と判断せず、内容や状況に応じて返し方を変える必要があるということです。

この記事では、業務への影響と本人が持っている判断材料を見ながら、すぐ答える場面、一緒に整理する場面、本人に考えてもらう場面を分けて説明します。

質問への返し方は、業務への影響と判断材料で分ける

部下から質問された時に、毎回同じように答える必要はありません。

まず確認したいのは、その場で判断が遅れると、お客様や金銭、安全などに影響が出るかどうかです。

影響が大きい場合は先に対応し、急がない場合は、本人が判断するための材料を持っているか確認します。

質問を受けた時は、次の3つに分けると対応を判断しやすくなります。

質問された状況上司の返し方優先すること
お客様・金銭・安全・期限などへの影響が大きい 先に答える・必要なら作業を止める 問題が広がるのを防ぐ
本人に判断材料や確認手順がない 判断基準や確認先を一緒に整理する 本人が考えられる状態を作る
必要な情報や基本手順がそろっている すぐ答えず、本人の考えを聞く 自分で判断できる範囲を広げる

お客様や金銭に影響する時は、先に対応する

お客様がその場で待っている時や、金銭、安全、期限に関わる時は、本人に考えてもらうことより、問題を広げないことを優先します。

コンビニ店舗を運営していた頃、お客様から、

「注文した揚げ物が袋に入っていなかった」

と申し出があったことがありました。

スタッフからは、

「お客様が、商品を入れ忘れていると言っています。どうしたらいいですか?」

と聞かれました。

この時は、スタッフに「自分ではどう対応すればよいと思う?」とは聞いていません。

まず、お客様へ謝罪したか、そのスタッフが会計を担当したのか、来店した時間やレシートを確認したかなど、対応に必要な事実を聞きました。

そのうえで、お客様にはお待たせしていることを謝罪し、確認するため少し待っていただくよう案内しました。

レジでは別のお客様も待っていたため、質問してきたスタッフには通常の接客へ戻ってもらい、私がクレーム対応を引き継ぎました。

このような場面で優先すべきなのは、その場でスタッフを教育することではなく、お待たせしているお客様と、店内にいる他のお客様への影響を小さくすることです。

考え方や報告の仕方を教えるのは、対応が落ち着いてからでもできます。

判断材料がない時は、一緒に確認する

質問が丸投げに見えても、本人が確認方法を教わっていないことがあります。

新人スタッフが、引継ぎ時のレジ金額確認で、

「お金が合わないです。どうしたらいいですか?」

と質問してきたことがありました。

私は最初に、

「他のレジや両替用の金庫は確認した?」
「前回の引継ぎ時は合っていた?」

と聞きました。

しかし、話を聞いていくと、その新人は、レジ金が合わない時に何を確認し、どのように報告すればよいかを十分に教わっていませんでした。

質問の言葉だけを見ると、何も確認せず答えを求めているように感じるかもしれません。

ただ、確認手順を教えられていなければ、本人だけで考えるのは難しいです。

この場合は、「自分で考えて」と返すのではなく、まず確認する場所や順番を教える必要があります。

金銭に関わるため、早めに報告したこと自体は間違いではありません。報告を受けた後に、次回はどこまで確認してから伝えるのかを教える方が現実的です。

判断材料がそろっている時は、本人の考えを聞く

一方で、基本の手順を理解しており、必要な情報もそろっている場合は、すぐに答えを教えず、本人の考えを確認します。

たとえば、「何に迷っている?」「自分ではどの対応がよいと思う?」と聞くことで、本人がどのような基準で考えているのかが分かります。

大切なのは、すべての質問に同じ返し方をしないことです。

業務への影響が大きい場合は先に対応する。

判断材料がなければ、一緒に整理する。

必要な材料がそろっている場合は、本人の考えを聞く。

このように対応を分けることで、必要な質問を止めずに、本人が判断できる範囲を少しずつ広げやすくなります。

「どうしたらいいですか」と聞かれた時は、どこで止まっているか確認する

部下から「どうしたらいいですか」と聞かれた時、すぐに答えを教える前に確認したいのは、本人がどの段階で止まっているかです。

状況そのものが分かっていないのか。

確認する場所が分からないのか。

いくつかの選択肢で迷っているのか。

本人なりの考えはあるものの、自信がなくて確認したいのか。

同じ言葉で質問していても、止まっている場所によって必要な返し方は変わります。

まず、今の状況を確認する

「どうしたらいいですか」だけでは、質問を受けた側も判断できません。

まずは、

「今、どのような状況?」
「何が起きている?」
「いつからその状態になっている?」

など、判断に必要な事実を確認します。

ただし、お客様や金銭などに関わる場合は、細かい説明を最初からすべて求めるのではなく、問題を広げないために必要な情報から聞きます。

質問の仕方を直すことよりも、まず目の前の仕事を安全に進めることが優先です。

次に、どこまで確認したかを聞く

状況が分かったら、

「どこまで確認した?」
「今までに何を試した?」
「マニュアルや前回の記録は見た?」

と聞きます。

これは、部下を問い詰めるためではありません。

本人がすでに確認した内容と、まだ確認していない内容を分けなければ、同じ説明を繰り返したり、見当違いの答えを伝えたりする可能性があるためです。

私がコンビニ店舗を運営していた頃、1日の売上を精算したスタッフから「金額が合いません」と連絡を受けたことがありました。

しかし、その言葉だけでは、パソコン上のデータやレジから出力される売上データをどこまで確認したのか、そのうえでレジ内の現金や両替用金庫まで確認したのかが分かりません。

そのため、私は「どこまで確認した?」と聞いていました。

最初のうちは、本人から確認方法や考えが出てくることはあまりありませんでした。

そこで、次に同じようなことが起きた時には、

「前回は、どこを確認した?」
「その時、私が何を確認するように言ったか覚えている?」

と、前回の対応を思い出してもらうようにしました。

すぐに大きく変わったわけではありませんが、少しずつ、

「ここまでは確認しましたが、まだ合いません」

と、自分から確認した範囲を伝えてくれるようになりました。

判断材料がある時に、本人の考えを聞く

状況と確認内容が分かり、本人に必要な情報がそろっている場合は、そこで初めて考えを聞きます。

「何と何で迷っている?」
「自分では、どちらがよいと思った?」
「そう考えた理由は何?」

と聞くことで、本人がどのような基準で考えたのかが見えます。

ここで注意したいのは、最初から「自分ではどう思う?」とだけ返さないことです。

判断材料を持っていない人に考えを求めても、答えが出ないことがあります。

また、上司の頭の中にある正解を当てさせるだけになれば、本人は考えるよりも、上司の反応を読むようになってしまいます。

質問への返し方を変える目的は、部下を困らせることではありません。

本人がどこまで分かっており、どこから支援が必要なのかを確認することです。

同じように状況確認から始めることが続く場合は、次から「今の状況」「確認したこと」「自分の考え」「確認したいこと」の順に伝えてもらうと、やり取りを短くしやすくなります。

質問する側の具体的な組み立て方については、別記事の「仕事で質問するのが苦手な人へ。丸投げと思われない聞き方と例文」で詳しくまとめています。

「分かりません」と返されたら、考えるための材料を渡す

部下に「自分ではどう思う?」と聞いても、「分かりません」と返されることがあります。

この返答だけを見ると、考えることを上司へ任せる丸投げ質問のように感じるかもしれません。

しかし、本人に考える意思がないとは限りません。

仕事の目的、選択肢、自分で判断してよい範囲など、考えるための材料が不足している可能性があります。

その状態で意見だけを求めても、本人は何を基準に考えればよいのか分かりません。

判断できない理由を先に確認する

「分かりません」と言われた時は、すぐに答えを教える前に、何が分からないのかを確認します。

たとえば、

「どの部分で迷っている?」
「選択肢が分からないのか、どちらを選ぶか迷っているのか、どっち?」
「自分で決めてよい範囲は聞いている?」

と質問します。

本人が必要な情報を持っていないなら、その状態で考えさせ続けても答えは出ません。

一方で、必要な情報はそろっているものの、自信がなくて答えられない場合は、どの基準で考えたのかを一緒に確認できます。

「分かりません」という同じ返答でも、止まっている理由によって必要な支援は変わります。

答えではなく、判断に使う基準を一つ渡す

考えが出てこない時に、すぐ答えをすべて教える必要はありません。

まずは、

  • 見るべき資料を伝える
  • 選択肢を二つに絞る
  • 優先する条件を一つ示す
  • 過去の似た事例を紹介する

など、考えるための材料を少し渡します。

たとえば、

「全部を一度に考えなくていいから、まずお客様への影響があるか確認してみて」

「AとBなら、今回はどちらを優先する仕事だと思う?」

と範囲を絞れば、本人も考え始めやすくなります。

答えを丸ごと渡すのではなく、どこを見て判断するのかを伝えることが、次の仕事にもつながります。

上司の主観が基準になる仕事では、すり合わせる期間が必要になる

現在、私自身も上司へ確認する立場です。

メール返信を確認へ回す基準として、「判断基準が複数ある内容」や「難しい内容」と説明されたことがありました。

ただ、「難しい」の範囲は人によって異なります。

複数の判断材料があるため確認へ回すと、「これは確認不要ではないか」と言われる。一方で、自分で判断すると、確認が必要だったと指摘されることもありました。

このような状態では、どこまで自分で判断してよいのか迷います。

上司の主観を最初から正確に読み取るのは難しいため、確認が必要だった例と不要だった例を共有しながら、判断基準をすり合わせる期間が必要だと感じます。

判断を外すたびに、すぐ原因や対策を求めたり、厳しく責めたりすると、本人は基準を学ぶよりも、「毎回確認した方が安全だ」と考えるようになることがあります。

本人に考えてもらうには、正解を当てさせるのではなく、どの条件を重視して判断するのかを少しずつ共有することが必要です。

同じ質問が続くなら、個人の問題か仕組みの問題かを分ける

同じ質問を何度も受けると、

「前にも説明したのに、なぜ覚えていないのだろう」

と感じることがあります。

しかし、同じ質問が続く理由は、本人が答えを覚えていないからとは限りません。

まず確認したいのは、同じ人だけが繰り返し質問しているのか、複数の人から同じ質問が出ているのかです。

同じ人から繰り返される時は、判断理由まで理解しているか確認する

同じ人から質問が続く場合は、前回の答えを覚えているかだけでなく、なぜその対応になったのかを理解しているか確認します。

答えだけを伝えていると、条件が少し変わっただけで、本人は同じ考え方を使えないことがあります。

そのため、

「前回は、何を基準に判断した?」
「今回と前回で違うところはどこ?」
「まず、どこを確認するんだった?」

と聞き、前回の経験を思い出してもらいます。

また、口頭で答えただけで終わっている場合は、本人が後から確認できる形で残しているかも確認します。

同じ質問をされたからといって、すぐに丸投げ質問だと判断するのではなく、前回の回答を次の仕事に使える状態になっているかを見ることが必要です。

複数人から同じ質問が出る時は、教え方や基準を確認する

複数のスタッフから同じ質問が出る場合は、個人の理解度だけでなく、職場の教え方や判断基準にも原因がないか確認する必要があります。

コンビニ店舗を運営していた頃、私が教えていた内容とは異なることを、新人へ伝えるスタッフがいました。

そのスタッフは、

「これは確認しなくていい」
「この作業はやらなくていい」
「これは聞かなくていい」

と、自分の判断で教えていました。

すると新人から、基準どおりに働いているスタッフへ、

「別の人には、やらなくていいと言われました」

と伝えることがありました。

教えられた内容が人によって違えば、新人はどちらに従えばよいか分かりません。

基準を守っているスタッフも、自分がきちんと取り組んでいることを否定されたように感じ、混乱したり、いら立ったりしていました。

このような状態で新人から確認が増えても、本人が自分で考えていないことだけが原因ではありません。

確認せずに進めれば、誰かから「なぜ聞かなかったのか」と指摘される可能性があるため、何度も聞く方が安全になってしまいます。

この時は、共有していた基準を独自に変えて教えていたスタッフへ注意しました。

教え方に差がある時は、新人へ質問の仕方を直してもらう前に、教える側の回答をそろえる必要があります。

質問を減らす前に、質問が出る理由を見直す

同じ質問が続いた時は、次の点を確認します。

  • 教える人によって答えが違っていないか
  • 判断してよい範囲が明確になっているか
  • 確認する相手が決まっているか
  • 例外的な対応が、一部の人の記憶だけに残っていないか
  • 前回の回答を後から確認できるか

複数人から同じ質問が出る場合は、質問と回答を共有できる形で残す方法もあります。

私の店舗では、同じ質問が続いたことをきっかけにQ&Aファイルを作りました。

詳しい作り方や、教える人による差を減らす方法については、「アルバイト教育でマニュアルは必要?教える人によって差が出ない職場の作り方」でまとめています。

質問の回数だけを減らそうとすると、必要な確認までされなくなるおそれがあります。

目指したいのは、質問を我慢させることではありません。

本人が判断できる内容は自分で進め、判断できない内容は必要な情報を添えて早めに確認できる状態です。

部下の質問への返し方に関するよくある疑問

Q. 部下に「自分で考えて」と言うのはよくないですか?

「自分で考えて」と伝えること自体が悪いわけではありません。

ただし、本人に判断材料がない場合は、まず「どこまで確認した?」「何に迷っている?」と聞き、考えられる状態かを確認します。

お客様、金銭、安全などへの影響が大きい場面では、先に必要な対応を伝え、考え方の確認は問題が落ち着いてから行います。

Q. 何度も同じ質問をする部下には、どう対応すればよいですか?

同じ人だけが繰り返しているのか、複数の人から同じ質問が出ているのかを分けます。

同じ人だけなら、前回の答えではなく、判断した理由まで理解しているか確認します。

複数人から出る場合は、教える人によって回答が違っていないか、判断基準や確認先が曖昧になっていないかを見直します。

Q. 忙しい時も、部下の質問へ毎回答えなければいけませんか?

すべての質問へ、その場で詳しく答える必要はありません。

ただし、対応が遅れるとお客様、金銭、安全、期限などへ影響する場合は、先に状況を確認して対応します。

急がない内容なら、「どこまで確認したか整理して、〇時にもう一度聞いて」と、確認する時間と、それまでに進めてよい範囲を具体的に伝えます。

まとめ

部下から「どうしたらいいですか」と聞かれた時は、業務への影響と、本人が持っている判断材料を見て対応を分けます。

お客様、金銭、安全、期限などへの影響が大きい場合は、先に必要な対応を伝えます。

急ぐ必要がなく、判断材料が足りない場合は、確認する場所や判断基準を一緒に整理します。必要な情報がそろっている場合は、すぐに答えを教えず、本人の考えを聞きます。

同じ質問が続く時も、本人だけの問題と決めつけず、教え方や判断基準に曖昧な部分がないか確認することが必要です。

育成は、答えを教えないことではありません。

必要な確認は早めにしてもらいながら、少しずつ自分で判断できる基準を共有していくことです。

次に質問された時は、すぐ答えるか「自分で考えて」と返す前に、まず「どこまで確認した?」と聞いてみてください。

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